山口久吉の話
       詳しくは、民宿やま久 までご連絡ください。
                 0288−98−0902




   
湯西川温泉 沢口薬師堂 と 山岳信仰の修験道




                               山 口 久 吉

   ★ 沢口、薬師堂

   栃木県県史編纂の史料調査のおり、古文書の中から一枚の紙片が出てきた。
  見ると、
   字沢口向、薬師、  一、弘仁十年弘法大師ノ自作、
             一、木象居丈九寸三分、信仰  山口冨吉、外拾壱人、
                                  とある、
   弘仁十年( 821年)とは驚いて早速氏子代表者を訪ね詳しく聞こうと思ったが
  書き残した物等何もない。 との事で薬師堂に案内してもらってお堂の中を見せ
  て頂いた。
   お堂の中には、ご祭仏の薬師瑠璃光如来の坐像と棟札があった。仏像は寄せ木
  造りで精巧に出来ており、殊に蓮座の花弁が綺麗に彫刻されていた。

   棟札、一、文化四丁卯歳、弘法大師作、奉入仏薬師如来郷中安全諸病悉除、
        七月十七日、工匠棟梁土沢邑、福田富蔵、
                         とある、外二枚は省略する。
   鰐口、には嘉永六丑年四月吉日、沢口村講中、大加子、+△宗川、の銘文があ
  った。

   所 在 日光市湯西川字沢口向、
   ご祭仏 薬師瑠璃光如来、
   氏 子 沢口部落、 氏子代表者、山口光衛、(世襲制度)
   ご縁日 正月七日、八日、と四月七日、八日、年二回、
       正月七日、オカラコを供える、氏子の人のお参り、お籠もりをする、
       四月七日、旗揚げ(二本)氏子の人のお参り、昔は花火をあげたと云う

   この花火筒が軒端に無造作に吊り下げられている、貴重な一品である。


   世襲世話人の系譜、冨吉―忠次―忠太郎―光衛(現在)信仰への道、道とは人々
  の通行の用に供する場所であり、文化伝承の道でもある。 湯端から鎮守様の下
  を抜け、太夫塚の前を通り寺屋敷跡から薬師堂の前に出る。 又、日向から明神
  岳の麓を通り、滝倉沢を下り前沢に出て四十八曲目を登り、前沢峠から赤沢に出
  て猿久保平から薬師堂の前に出る。 この道は更に花輪水引沢から石休道を経て
  枯木山の麓を通り、会津の湯の花へ通じる枯木通りの道筋が記されている。
   この古絵図を発見した時、弘仁十年弘法大師の思惑が走る。山岳信仰の盛んな
  時代に修験道の道筋であったろうか、ともかく村人達の信仰は今尚続いている。



   ★花 火、(湯西川では)

   花火と言えば大曲の全国花火大会や隅田川の花火大会を連想する。 栃木県で
  は足利や今市の花火大会など、夏の夜空を彩る風物詩でもある。

   湯西川では花火製造法を記した古文書が沢口の大類吉蔵、持主として保存され
  ている。 かなり古い年代ではあるが、それによると、

   玉すだれ、の花火は、拾匁焔硝、三匁硫黄、弐匁五分木灰、六匁鉄粉、そして
   やなぎ、の花火は、拾匁焔硝、弐匁弐分硫黄、四匁木灰、五匁鉄粉、等など

   たった四種類の目方の分量の組合せで、色々な花火が造られていたのである。
  其のほかにも、一条の花上り、玉火、はぎ、金銀花、吉野桜、等などなんと三十
  九種類もの花火の組み合わせがしるされている。

   この文書の時代に沢口の薬師如来の御縁日に、これらの花火が打ち上げられて
  いたのであらうか。その打ち上げに使われたと思われる花火筒が、薬師堂の軒先
  に吊り下げられて今でも保存されている。 其の筒は木製で筒の長さと口径から
  して花火の打ち上げに使われたもので、今に残る貴重な文化財でもある。

   ここの薬師如来は古文書によると、弘仁十年弘法大使の自作とある、又棟札に
  も弘法大師作の文字がある。 寄木造りのこの仏像千三百年前のものなのか、確
  かに由緒ありげなお姿である。                                ご縁日は正月の七日、八日そして四月の七日、八日と聞いた、このご縁日に花
  火を打ち上げていたのではなかろうか。

   遠い昔のこれらの行事、そしてその折に打ち上げられた夜空の花火に思いをい
  たし、湯西川で自分等で作って自分等で打ち上げた、花火造りの記録とそれに使
  われた、花火筒で当時を想像して欲しいと思うこと一入である。





                         ふる里探訪 湯西川 35
                         ふる里探訪 湯西川 21


資料、

  古絵図

  今に残る花火打上げ筒


   沢口、薬師堂
  花火製造法の文書










       湯西川温泉マニアックス トップページへ 戻る 
          湯西川温泉  民宿 やま久  囲炉裏の温泉民宿